1.1 特許と実用新案の違い

特許法と実用新案法で定義されている、特許と実用新案の違いは、
1.特許・実用新案とはでご理解いただけたと思います。
ここでは、さらに制度としての具体的な違いを見ていくことにします。

例えば、物品の構造について、いままでの課題を解決する構造を創作したとすると、これを発明として特許を受けることもできますし、実用新案として登録を受けることもできます。どちらを選ぶかは、出願する人の自由です。但し、材料や方法を創作したとすると、これらは実用新案の対象ではなく、発明として特許を受け、保護を受けるしかありません。
こうして見ますと、特許のうち高度でないものは、簡易な実用新案としても保護を受けることができるといえます。特許は実用新案に比べ、権利も強く、保護を受ける期間も、実用新案が10年に対し、特許は20年と長く、文末の図に示すようにより厚い保護を受けることができるといえます。
では、この違いを詳しく見ていくことにします。

制度の上では、特許と実用新案は、非常に大きな違いがあります。特許と実用新案は、独占排他的権利を与えて保護する点では違いがなく、創作の対象も、実用新案は特許に包含される関係にありますが、平成5年の法律改正で、実用新案は実体審査を行わなくなりました。これによって、ライフサイクルの短い技術を適切に保護できるように、実用新案制度は、早期に登録を行う制度になりました。

特許の場合には、出願人は特許出願のあと、その発明を権利化しようとするときは、出願から3年以内に出願審査の請求をすることができます。そして、特許庁の審査官により、その発明が保護を与えるに相応しい発明(新規性、進歩性)であるかが審査されます。
出願審査の請求をしないで、その発明の権利化を断念する場合でも、出願から1年6月でその発明は出願公開され、他人がその発明を権利化することはできなくなります。こうすれば、出願人がその発明を実施しても、他人により権利侵害を訴えられることを防止することができます。逆に、他人がその発明を実施しても権利化できていないのですから、権利侵害を訴えることはできません。

実用新案の場合には、出願人は実用新案登録出願と同時に、第1年から3年分の登録料を同時に特許庁に納付することで、出願書類に書式上の欠陥がなければ、登録され実用新案として保護を受けることができます。
特許の場合には、保護を与えるに相応しいかが審査され、相応しいものに保護が与えられるのに対して、実用新案の場合には、相応しいかが審査されなくても保護が与えられるので、保護に相応しくない実用新案権が発生し、その権利が行使されうることを前提にしていることが制度の特徴となっています。

特徴の一つ目は、創作の対象を物品の形状や構造、その組合せに限定することで、権利内容が視覚的に当事者同志で理解しやすい対象に限定されています。
二つ目は、権利侵害を訴えるなどの権利行使は、権利の有効性に関する客観的な判断材料である実用新案技術評価書を提示して警告した後でなければ、権利行使できないとしています。
三つ目は、瑕疵ある権利を濫用することのないよう、より慎重な判断の下に権利を行使することが求められ、行使した権利が無効であった場合には、権利者が注意義務に違反したとして、逆に相手の損害賠償の責任を負うこととしています。
四つ目は、特許の場合には、当業者であれば公報などを調査すべき注意義務があるとされ、侵害があればそれは注意義務を怠ったという過失があったからであると推定できることにして、民法第七百九条の過失の立証責任を転換しています。実用新案の場合には、瑕疵がある可能性のある権利の公報を調査すべき注意義務を当業者に求めることは酷であることから、民法第七百九条の通り、過失の立証責任は権利者にあるとしています。

以上を比較表にして次ページに示します。




更に詳しくは、ご遠慮なくお尋ねください。