2.1 保護を受けることができる発明

どんな要件を満たせば保護を受けることができるのか、特許と実用新案に共通的な要件は、2.保護を受けることができる発明・考案とはの説明でご理解いただけたと思います。ここでは、実体審査が行われる特許の制度に特徴的な要件を見ていきます。

特許出願手続きの円滑迅速な進行を図るためには、はじめから完全な内容の書類を提出することが望ましいが、実際問題として当初から完全なものを望み得ない場合も少なくありません。このことから、実体審査と前後する形で出願時に提出した書類を補正することが認められています。但し、無制限に補正ができるとしては、先願主義の制度を覆してしまうので、補正の内容・程度によっては、以下のとおり、実体審査で拒絶され保護を受けることができません。

(1)補正は新規事項を追加してはならない
「第一項の規定により明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をするときは、誤訳訂正書を提出してする場合を除き、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならない。」(特許法第十七条の二第三項)
【説明】補正は出願時に遡及するため、当初の書面に記載した範囲を超えた補正が許されるとすると、第三者は不測の不利益を受ける場合が生じます。このような補正は新規事項を追加するものとして、保護を受けることができません。

(2)補正は特別な技術的特徴を変更してはならない
「前項に規定するもののほか、第一項各号に掲げる場合において特許請求の範囲について補正をするときは、その補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明と、その補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明とが、第三十七条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものとなるようにしなければならない。」(特許法第十七条の二第四項)
【説明】実体審査で拒絶理由を通知した後に、特許請求の範囲に補正の前後で発明の単一性を満たさない補正を認めると、先行技術の調査や審査のやり直しとなる場合があります。これは迅速・的確な権利付与に支障が生じるばかりでなく、出願間の取扱いの公平性も十分に確保できないことになるので、このような補正は、保護を受けることができません。但し、この要件を満たさないまま、見落とされ登録されても、形式的な不備を残すだけなので、無効理由にはなりません。

補正に関することは、特許庁の審査官による拒絶理由通知などに対する対応に関することになり、専門家に委任いただく場合が多くなると思います。
更に詳しくは、ご遠慮なくお尋ねください。