3.1 出願書類

特許出願の場合には、願書を提出し、願書に明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書を添付します。実用新案登録出願の場合には、図面も必ず添付しなければならないことは、3.出願の手続きとはの説明でご理解いただいたと思います。
ここでは、これらの書類についてもう少し詳しく見ていき、出願人様が出願手続きを依頼される際に、ご用意いただく資料やデータをご理解いただきたいと思います。
基本的には、手続きは特許庁コンピュータにオンラインで手続きします。紙の書類で手続きする場合には、特許庁コンピュータの磁気ディスク上に記録を求めることが必要になり、別途手数料が必要になります。また、紙の書類の様式はA4縦で横書きに統一されています。

(1)願書
発明者の欄に発明者の氏名と住所、特許出願人の欄に特許出願人の氏名と住所、代理人を選任していれば代理人の欄に代理人の氏名と住所を記載します。
提出物件の目録の欄に、特許請求の範囲 1、明細書 1、図面 1(図面があれば)、要約書 1と記載します。
実用新案の場合には、考案者の欄に考案者の氏名と住所、実用新案登録出願人の欄に実用新案登録出願人の氏名と住所、代理人を選任していれば代理人の欄に代理人の氏名と住所を記載します。
提出物件の目録の欄に、実用新案登録請求の範囲 1、明細書 1、図面 1、要約書 1と記載します。
その他、整理番号、提出日、国際特許分類、手数料の表示、識別番号、証明書類の表示を必要に応じて記載します。

(2)特許請求又は実用新案登録請求の範囲
この請求の範囲は、特許や実用新案の技術範囲を定める基準となるものです。そのために、特許請求の範囲には、請求項に区分して、請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければなりません。また、特許請求の範囲の記載は、①特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること、②特許を受けようとする発明が明確であること、③請求項ごとの記載が簡潔であること、④請求項の番号振りは経済産業省令で定めるところによること、の要件を満たさなければなりません。①から④の記載要件は、保護を受けるための要件にもなっているばかりでなく、④を除いて無効理由にもなる重要な要件です。
実用新案登録請求の範囲の場合も、特許出願人が実用新案登録出願人であること、発明が考案であることを除き、同じ要件が課されています。
この記載が明確であり、簡潔であることは、文章があいまいであることで生じる権利の紛争を防止するうえで重要なことになります。

発明を特定する事項の過不足のない列挙は出願人様にご用意いただくことになります。何を権利としたいか、は発明者様又は出願人様の意思表示をいただく必要があるからです。特定する事項が多ければ、それらを全て満たす発明が既に公知であるとされる可能性は小さくなりますが、権利範囲は狭くなります。逆に、特定する事項が少なければ、それらを満たす発明の権利範囲は広くなりますが、既に公知とされる可能性は大きくなります。この面からも、先行技術の調査が重要であることをご理解いただけると思います。
また、請求項の数は出願する発明や考案の規模を示す目安になることから、出願審査の請求の手数料や特許料では請求項の数を料金の基準としています。

(3)明細書
この明細書は、前述の請求の範囲の用語の意義を解釈するうえで考慮されるものであるだけでなく、法律制定のもう一つの目的「利用を図る」べく、発明や考案を開示する書類です。このため、明細書には、①発明の名称、②図面の簡単な説明、③発明の詳細な説明を記載しなければなりません。
さらに、③発明の詳細な説明には、④発明が解決しようとする課題とその解決手段の技術的意義を当業者が理解でき、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなければなりません。⑤その発明に関連する文献公知発明のうち、特許を受けようとする者が知っている刊行物の名称など情報の所在を記載しなければなりません。こうして、発明や考案の利用を図るために開示する代償として、独占排他的な実施権利を与えられ保護されるのです。従って、発明の詳細な説明の記載要件④は、保護を受けるための要件にもなっているばかりでなく、無効理由にもなる重要な要件です。
実用新案登録請求の範囲の場合も、発明が考案であることを除き、同じ要件が課されています。

さらに、発明の詳細な説明の記載に当っては、次のような見出しにすることを標準とされていますので、出願人様にご用意いただく資料やデータもそれに沿って、ご提示いただくことになります。
a.技術分野:特許を受けようとする発明の技術分野を明確にします。
b.背景技術:文献公知発明を含め、特許を受けようとする発明に関連する従来の技術を説明します。
c.先行技術文献:上記⑤に該当します。
d.発明の概要:さらに、発明が解決しようとする課題、課題を解決するための手段、発明の効果というようにストーリ展開させます。
e.図面の簡単な説明:図面を添付している場合に必要です。
f.発明を実施するための形態又は実施例:当業者が当該発明を実施することができるように、発明をどのように実施するかを示します。上記④に該当します。
g.産業上の利用可能性:発明が産業上利用することができることが明らかでないときは、特許を受けようとする発明の産業上の利用方法、生産方法又は使用方法をなるべく記載します。
h.符号の説明:必要に応じて、図面の主要な部分を表す符号の説明を記載します。

(4)図面
原則的には製図法により作成しますが、説明に最も適する、ブロック図、フローチャート、グラフなどの図表も可能です。また図面に関する説明は、原則として明細書の中に記載しなければなりません。作図することが極めて困難である場合には、顕微鏡写真、X線写真は図面として採用できます。特許の場合には図面は必要に応じて添付しますが、実用新案の場合には必ず添付しなければなりません。

(5)要約書
要約とは、発明の概要を平易な文章で簡潔に(400字以内で)記載したものであり、一般の技術者が特許文献の調査の際に、その発明の要点を速やかに、かつ的確に判断できるように記載したものです。要約書は、発明の名称および選択図と共に公報のフロントページに掲載されます。そのため、は出願日(優先日)から1年3月以内(出願公開の請求があった後を除く)に限られています。
実用新案の場合には、発明が考案であること、補正できる期間が出願から1月以内であることを除き、特許の場合と同じです。

ここでは出願に必要な作成書面について説明いたしましたが、出願人様が出願手続きを依頼される際には、出願人様がご用意される資料やデータに基づいてこれら書面を作成いたします。
更に詳しくは、ご遠慮なくお尋ねください。