3.2 出願手続きの流れ

特許と実用新案登録の出願手続きの流れをフロー図で、それぞれ図1と図2に示します。
左側の列には、お客様、出願人様と当事務所などの代理人の手続きを、中央と右側の列には、特許庁や裁判所の処分や審査、審理を記載しています。手続きができる時期的要件も説明に記載しておりますので、併せてご覧ください。


[特許の流れの説明]
①出願書類の受領:出願書類が手続き的・形式的に整っていれば受領され、提出した日が出願日となります。先願主義を採用していますので、発明をしたら早急に出願すべきです。また、特許出願以前に発明を公表することはできるだけ避けるべきです。

②方式審査:提出された出願書類は、所定の書式通りであるかどうかのチェックを受けます。必要項目が記載されていない等の違反がある場合は、補正命令が発せられます。指定期間内に補正がされないときは、手続きが却下されます。

③出願公開:出願した日から1年6月で公開特許公報が発行されます。こうして、発明が公開される代償に、出願人には補償金請求権が生じます。補償金請求権については、4.特許権・実用新案権とはを参照ください。

④出願審査の請求:出願されたものは、全てが審査されるわけではなく、出願人又は第三者が出願審査の手数料を納付し、出願審査の請求がされたものだけが審査されます。出願審査の請求は、出願から3年以内であれば、いつでも誰でもすることができます。

⑤出願のみなし取り下げ:出願から3年以内に出願審査の請求のない出願は、取り下げられたものとみなされます。この場合、以降同じ発明を権利化することはできませんので注意が必要です。

⑥実体審査:審査は、特許庁長官が指名した特許庁の審査官によって行われます。審査官は、出願された発明が特許されるべきものか否かを判断します。このため、審査においては、1.特許・実用新案とはで説明した法律の定義や2.保護を受けることができる発明・考案とはで説明した要件満たしているか否か、すなわち、拒絶理由がないかどうかを調べます。

⑦拒絶理由通知:審査官が拒絶の理由を発見した場合は、それを出願人に知らせるために拒絶理由通知書を送付します。審査官が拒絶理由に該当するという心証を得た場合でも、なんら弁明の機会を与えないで、ただちに拒絶査定することは出願人に対して苛酷です。また、審査官も全く過誤がないとは保証し得ないので、出願人に意見書を提出する機会を与え、その意見書を基に審査官が再審査する機会にする趣旨です。これによって、出願人は意見書を提出するに必要な相当期間(通常60日)が与えられます。

⑧意見書・手続補正書の提出:例えば、従来技術と同じだから既に公知であるという理由で拒絶された場合、出願人は、従来技術とはこのような点で相違するという反論を意見書として提出したり、特許請求の範囲や明細書等を補正することにより拒絶理由が解消される場合には、その旨の補正書を提出する機会が与えられます。

⑨特許査定:審査の結果、審査官が拒絶理由を発見しなかった場合は、特許すべき旨の査定を行います。また、意見書や補正書によって拒絶理由が解消した場合にも特許査定となります。出願審査の請求から、現状の平均は約2年半を要しています。

⑩拒絶査定:意見書や補正書をみても拒絶理由が解消されておらず、やはり特許できないと審査官が判断したときは、拒絶をすべき旨の査定を行います。

⑪拒絶査定不服審判の請求:拒絶査定に不服があるときは、拒絶査定不服審判を請求することができます。ただし、請求できる期間は査定の謄本の送達があった日から3月以内です。この期間を経過すると、不服がないものとして、拒絶査定が確定します。

⑫拒絶査定不服審判:拒絶査定不服審判の審理は、特許庁の三人または五人の審判官の合議体によって行われます。審判官の合議体による決定を審決といいます。審理の結果、拒絶理由が解消したと判断される場合には特許審決を行い、拒絶理由が解消せず特許できないと判断される場合には、拒絶審決を行います。

⑬設定登録:特許査定がされた出願については、出願人が特許料を納めれば、特許原簿に登録され特許権が発生します。ここではじめて、特許第何号という番号がつくことになります。特許権の設定登録後、特許証書が出願人に送られます。ただし、登録料を納付することができる期間は査定又は審決の謄本の送達があった日から30日以内です。

⑭特許公報の発行:設定登録され発生した特許権は、その内容が特許公報に掲載されます。

⑮審決取消訴訟の提起:拒絶審決に不服があるときには、審決取消訴訟を知的財産高等裁判所に提起することができます。ただし、提起できる期間は審決の謄本の送達があった日から30日以内です。この期間を経過すると、不服がないものとして、拒絶審決が確定します。

⑯審決取消訴訟:知的財産高等裁判所は、審決取消の請求に理由があると認めるときは、当該審決を取り消し、審決取消の請求に理由がないと認めるときは、請求を棄却します。
当該審決が取消された場合には、拒絶査定不服審判でさらに審理を行い、再度審決をします。

⑰上告の提起:審決取消訴訟の判決に不服があるときは、上告審を最高裁判所に提起することができます。ただし、提起できる期間は判決の送達があった日から2週間以内です。この期間を経過すると、不服がないものとして、原判決が確定します。

⑱上告審:最高裁判所は、上告に理由があると認めるときは、原判決を破棄し、上告に理由がないと認めるときには、判決で上告を棄却し、原判決が確定されます。


[実用新案の流れの説明]
①出願書類の受領:出願書類が手続き的・形式的に整って、登録料が納付されれば受領され、提出した日が出願日となります。先願主義を採用していますので、考案をしたら早急に出願すべきです。また、実用新案登録出願以前に考案を公表することはできるだけ避けるべきです。

②方式審査(基礎的要件):特許庁長官が、出願された考案が実用新案登録されるべきものか否かを判断します。このため、2.2 保護を受けることができる実用新案で説明した基礎的要件満たしているか否か、を調べます。基礎的要件満たしていない場合には、補正命令が発せられます。指定期間内(通常60日)に補正がされないときは、手続きが却下されます。

③方式審査:提出された出願書類は、所定の書式通りであるかどうかのチェックを受けます。必要項目が記載されていない等の違反がある場合は、補正命令が発せられます。指定期間内に補正がされないときは、手続きが却下されます。

④設定登録:方式違反がないか、解消されれば、実用新案原簿に登録され実用新案権が発生します。ここではじめて、登録第何号という番号がつくことになります。実用新案権の設定登録後、実用新案登録証が出願人に送られます。

⑤実用新案公報の発行:設定登録され発生した実用新案権は、その内容が実用新案公報に掲載されます。

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